【図解付き】ティール組織とは?マネジメントのプロが特徴と導入方法を解説
2010年代に論文でティール組織について読みました。生き物のように変化すると言われ、面白法人カヤックへのインタビューも掲載されていました。
それから約10年、今更ですが書籍を読んでみました。そこでティール組織についてまとめつつ、ティール組織のやり方をチームに導入する方法について考えてみます。
私自身、長年に渡りマネジメントに携わり、自由と裁量を重視する会社にいた期間も長いです。また転職経験が多く、人を交換可能で使い捨ての歯車として扱うような会社もいくつか経験してきました。
そんな経験も含めてティール組織について書いてみます。書籍はこちらです。600ページほどあるので覚悟して読む必要があります。
ティール組織とは何か知りたい方はもちろん、働きやすい職場とは何かについて悩んでいる方、従業員のパフォーマンスを高めたい方、チーム作りに悩んでいる方などの参考になれば幸いです。
組織の発達段階
ティール組織について解説する前に、まずは組織の発達段階について解説します。理由は歴史とともに組織の種類が変化してきたからです。
ティール組織の書籍でもまずは組織の発達段階から解説を始めています。
組織には7つの発達段階がある
人類は組織を歴史とともに次のように発展させてきました。この分類は面白いと感じます。
順番 | 種類 | 概要 |
---|---|---|
1 | 無色 | 血縁関係中心の集団。主に原始時代。 |
2 | マジェンタ(神秘的) | 数百人規模の部族。儀式を行うようになったため神秘的。 |
3 | レッド(衝動型) | 強い者が支配する集団。階層や役職はまだない。 |
4 | アンバー(順応型) | いわゆる官僚型組織。階層があり、計画やルールで支配する。 |
5 | オレンジ(達成型) | ビジネス界の発展とともに広まった目標達成、利益重視の組織。 |
6 | グリーン(多元型) | 平等と多様性を重視するNPOやコミュニティのような組織。 |
7 | ティール(進化型) | 世界中でもごく一部しかない自律型で変化し続ける組織。 |
特に重要なのはレッドからティールまでの組織です。
古代の組織
一番最初の組織は無色です。これは血縁関係だけですので、現代ではあえて文明と離れて生活しているごく一部の部族だけが該当します。人類は最初はここからスタートしたのでしょう。
人類が道具を作って農作などをし始めると、段々と人類が栄えて村などができてきました。そうすると数百人規模の集団ができあがり、村や部族のようなものになります。これがマジェンタ組織です。
このような集団では長老や巫女がいたり、儀式が行われたりしました。そういう意味で神秘的とティール組織の書籍内では書かかれているのでしょう。
それが更に発達すると、強い者がリーダーとなる集団が出来上がります。古代ではこうして国家などができたのでしょうけど、いわゆる武闘派民族もこれに該当しそうだなと私は感じました。
現代ではレッド組織はマフィアなどにしか残っていないでしょう。ブラック企業はレッド組織じゃないかと思ったのですが、上下関係や権力があるので違うでしょうね。
あくまでもレッド組織はボスと手下みたいな関係でしょうから。
野生動物では強い者がリーダーとなる形態は多そうですね。
現代までの組織
国家ができてくると、人類は制度を作り、計画を立てて物事を進めるようになりました。大勢の民衆を統制するためには制度が必要だったわけです。また税収を得る上でも制度は必要ですよね。
こうして制度や計画を作り、階層や役職があるアンバー組織が出来上がりました。いわゆる官僚型組織です。
そこから時代が進み、企業が増えてくると、オレンジ組織が登場しました。
オレンジ組織は官僚型組織のように階層や役職がある組織ですが、利益を上げるという目標を掲げている点が違います。
そのためイノベーションや説明責任、実力主義などの特徴があり、利益という目標のために活動します。組織を構成するメンバーが歯車である点はアンバー組織と変わりません。
先進的組織
オレンジ組織の先にあるのがグリーン組織です。グリーン組織は階層や役職がある組織とは違い、平等や多様性を重視するNPOやコミュニティなどに近い組織です。
先進的な企業では、最近は階層をフラット化し、現場の裁量に任せるようになってきています。これもグリーン組織です。
しかしもっとすごい組織が世の中のごく一部に存在します。それがティール組織です。
ティール組織はもはや現状の組織とは真逆です。階層がなく、会社や上司の指示・命令もありません。
ティール組織の特徴
ティール組織の特徴を3つ挙げます。私個人の見解としては、コミュニティとかサークルに近いと感じます。上の言うことを聞くではなく、みんなで協力して達成するからです。
自主経営(セルフマネジメント)を行う
ティール組織は自主経営を行います。これはどういうことかというと、現場の従業員は会社や上司の指示に従って動くのではなく、自分たちで何をやったらいいかを考えて動くということです。
経営陣が会社の方向性を示しますが、それを実行する計画を立てる管理職がいません。現場でみんなが協力して計画を立てて実行していくのです。
ティール組織は管理職がいないフラット型組織であることが多いようです。管理職のようなポジションが必要になれば、現場の中からリーダー役を選んで任せます。
また管理職がいる会社であっても、経営陣も管理職も現場に指示・命令を出すことはできません。あくまでも助言と支援だけしかできません。
全ての仕事は現場の従業員が協力しながら、やるべきことの検討から進めるところまでをやります。
私は転職回数が多い方ですが、働きやすい会社は会社や上司が好きなようにやらせてくれます。つまり自由と裁量があるのです。
一方で働きづらいと感じる会社は会社や上司の命令が絶対であり、自由も裁量もありません。
そういう理由があって、私がマネジメントするときはメンバーに自由にやらせてあげるようにしています。実際に残業が全然発生せずに仕事が終わるので、この方が上手く行きます。
全体性(ホールネス)重視
世の中には会社に行くのが億劫だという人が少なくないかもしれません。
従来型組織では労働者は公的人格と私的人格を分けることを求められました。仕事をしている最中は、会社や上司に忠実であることを求められ、顧客に丁寧に対応することを求められます。
現場仕事では制服や作業着、オフィスワークではスーツが公的人格に切り替えるツールとしての役割も果たしています。
そして顧客も制服や作業着、スーツを見て働いている最中だと判断します。
しかしティール組織では制服や作業着、スーツは変らないでしょうけど、公的人格と私的人格を分けることは行われません。
ティール組織では従業員が自分らしくいられることを重要視します。会社や上司の指示・命令に忠実に従うことではなく、みんなで一緒に協力して達成することが求められるからです。
だから自分の能力や個性をドンドン発揮することが求められますし、多様性も認められています。それゆえ公的人格と私的人格を分ける必要性はないのです。
またこういう理由からティール組織では、経験やスキルよりも自社の文化に合うかどうかを重要視して採用を行います。
これは私も同意したいところです。多くの会社では経験やスキル、経歴が豪華な人を欲するでしょう。私自身も経歴の貧弱さを理由に不採用になったことは数えきれません。
ですが本当は自社に合う人の方が長期的に見れば離職しづらく、活躍もしてくれます。どれだけ優秀でも、会社はそれぞれルールも文化もプロセスも違います。合う合わないは必ず発生します。
また心理的安全性がある職場では自分らしくいられます。
心理的安全性がない職場だと、会社や上司が黙って言うことを聞けよという風習であり、仕事を楽しくやろうとしても、仕事は遊びと違うと厳しく説教されます。
仕事を嫌々ながら仕方なくやってもダメでしょう。楽しく前向きにやることは大事だと私は考えています。ティール組織にとってもそれは普通のことと考えてよいようです。
存在目的重視
一般的な企業では、目標は競争に勝つことや利益を上げることです。
しかしティール組織では目標は存在目的すなわち組織のパーパスやミッションなどになります。そしてその内容は社会的意義です。世の中の問題・課題を解決して世の中を良くするというものです。
従来型組織ではノルマで従業員を統制します。しかしティール組織では存在目的のために従業員が自発的に頑張るのです。
もちろん従来型組織でもミッションはありますし、最近はパーパスを定めることが流行りです。
とはいえ従来型組織ではミッションよりも競争への勝利や利益が優先されがちだとティール組織の書籍には書かれています。
利益を上げないと企業は存続できないので、そうなるのも仕方ないと私には感じます。
これに対してティール組織は利益を存在目的を果たしたら付いてくるものだと考えます。つまり結果的についてくるものであり、目的ではないのです。
私にはこう感じます。従来型組織はミッションが手段で利益が目的である。それに対してティール組織ではミッションが目的であり、ミッションを達成した結果として利益は付いてくるものであると。
ティール組織のやり方をチームに導入する方法
ティール組織を作ることはとても困難です。しかし私はティールのやり方をチームに導入して働きやすさを上げることは可能だと考えています。
私は転職経験が多い方ですし、マネジメント経験も長い方です。その経験からティール組織のやり方をチームに導入する方法について考えてみます。
リーダーがメンバーをサポートする
ティール組織ではリーダーはサーバントリーダーシップを取ります。メンバーが主役となって自分たちの裁量で相談しながら進めます。リーダーの役割は助言や支援です。
これに倣うと、昔ながらの「俺について来い」とか指揮命令ではなく、目的を話して自由にやらせるということになります。そしてリーダーはサポートに徹します。
プロジェクトなどのチームでも、メンバーの裁量に任せることは可能です。リーダーすなわち管理職やプロジェクトマネージャーがあれもこれも管理していたら、時間がいくらあっても足りません。
そこでメンバーに裁量を与えて、自分で考えて好きにやらせればいいです。マイクロマネジメントもなしで、思い切って任せるのです。ただしサポートは必ずします。
私はいつもこういう放任スタイルですが、メンバーが勝手に進めて上手くやってくれるので、とても助かっています。
裁量を与えて任せる
ティール組織に倣い、メンバーに裁量を与えてやり方を任せることは、ティール組織にしなくても可能です。普通に部署やプロジェクトチームという規模で可能です。
この場合、細かい口出しをしてはいけません。信じて任せることも必要です。ただし苦戦していそうとか、危険そうな雰囲気がしたら助けましょう。
そして責任があることも任せ、細かい報連相は求めないように気を付けましょう。
リーダーがあれこれ口出ししてばかりでは、メンバーはやりづらいでしょう。そして何をするにも何を決めるにもリーダーにお伺いを立てないといけません。いくらアイディアを思い付いても、何も活かせません。何でも言われた通りにするしかないのですから。
かといって細かく言わないと不安とか、任せるのは不安という方もいらっしゃるかもしれません。そんな方はこちらの記事を読んでみてください。
またメンバーに裁量を与えても自分で判断できるのか不安だと感じるかもしれません。そもそもリーダーとメンバーでは持っている情報量が違います。そして判断には情報が必要です。
そういう理由もあって私は情報をできるだけメンバーに隠さず共有することを心掛けています。
心理的安全性を確保する
ティール組織には心理的安全性があります。だから従業員は自分らしくいることもでき、意見を言い合って仕事を進められます。
よって心理的安全性を確保すれば、メンバーが意見を出し合って、自分の個性や能力を発揮して活躍する土台ができます。これはホールネスの実現にもなるでしょう。
心理的安全性を確保するためには目的や目標をしっかり話すことが大事です。
他にも色々と心理的安全性を確保する上で気を付けることや、心理的安全性の効果などを記事に書いていますので、是非読んでみてください。
実験、適応、高速反復を実践する手法を導入する
ティール組織は実験、変化への適応、高速反復を繰り返します。これはアジャイルという手法でもやっていることです。
ティール組織は進化型組織とも言われ、生き物のように変化し続けます。決まった役割があるわけではなく、状況に応じて役割が変わります。従業員が自分たちで考えて必要な仕事を作るのです。
また変化し続けるからこそ適応力もあります。仕事が変われば0から試行錯誤することもあるでしょうから、実験や高速反復も必要になります。
これらは従来型組織の部署やプロジェクトチームでも採用可能です。実際にアジャイルを導入してこれらを実践する会社も増えてきています。
前例がない仕事ほどティール組織に倣って実験、適応、高速反復を行いましょう。
前例がない仕事や新しいチャレンジに使える手法については、実験や高速反復以外にも様々な手法が存在します。詳細はこちらの記事に書いていますので、気になったら読んでみてください。
終わりに
今回はティール組織について概要を解説し、私自身の転職経験やマネジメント経験も付け加えました。
そして私自身のマネジメント経験から、ティール組織でなくてもチームにティール組織のやり方を導入する方法を解説しました。
私の転職経験から働きやすい職場づくりにティール組織のやり方は活かせると考えています。
ぜひあなたもティール組織の書籍を読んで、働きやすい職場、従業員が活躍できる職場について考えてみてください。