SWOT分析のやり方をわかりやすく解説!実在する企業の例付き
今回はSWOT分析のやり方を解説します。
SWOT分析は事業の評価や目標達成のための戦略を考えるのに使えるフレームワークです。内部環境と外部環境の2つの観点から自社あるいは自分の現状を分析します。そして次の手を考えます。
私個人の意見としては、内部環境と外部環境という分け方は解りやすいと感じます。内部環境は自社次第で変えられる余地がありますし、外部環境はロビー活動でもしなければ変えることができません。
また世の中の流れや法規制の変化もあり、これらは外部環境です。よって外部環境は無視できません。
今回は実在する企業を例としてSWOT分析のやり方を解説します。ロジカルシンキングや経営戦略を学んでいる方、ビジネススキルアップに励みたい方の参考になれば幸いです。
最初に参考書籍を挙げてきます。私が持っている書籍の最新版です。長く増刷されているフレークワークの書籍ですが、AI時代になって新版になりました。
最強フレームワーク AI時代の知的生産力が劇的に高まる [ 永田 豊志 ]
SWOT分析とは
SWOT分析とは自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Theat)の4つの観点から自社の現状やマクロ環境の現状を分析する方法です。
自社の強みと弱みは内部環境、機会と脅威は外部環境です。内部環境は自社が頑張れば改善できます。しかし外部環境は流行や法規制などなので、自社が頑張ってもどうにもならない可能性が高いです。つまりどう対応するかが重要なのですね。
強みは言うまでもないでしょう。技術力が高い、品質が高い、デザイン性に優れる、サービスがいい、新規顧客の開拓力が高い、既存顧客の維持率が高いなどです。
弱みの例としては、コストが高い、個性がない、新規顧客を開拓できていない、既存顧客の維持率が低い、新製品・新サービスを開発できていないなどでしょう。
機会の例としては、DXやAIが流行っているので、IT企業にとっては受注を増やすチャンスであるとか、学校や保育、介護などのIT化が遅れている企業にとっては競合に先んじてIT化を進めるチャンスであるなどがあります。
脅威の例としては法規制の強化や緩和が挙げられます。インボイス制度は個人事業主に大きな影響を与えたでしょう。派遣やネット金融などは規制緩和によって増えました。昨今ですと物価高も脅威です。
このように強み、弱み、機会、脅威という内部環境と外部環境で分析しつつも、強みと弱み、機会と脅威のような表裏一体の視点も持つフレームワークがSWOT分析です。
さらには内部環境と外部環境の2つの軸で2×2のマトリックスとすることで、4つの戦略を考えます。こうして次の手を考えます。
SWOT分析のやり方
続いてSWOT分析のやり方を見ていきましょう。
強みと弱みに該当する要因
例えば自社を分析した結果、技術力は評価されているけど、顧客開拓ができていないとなった場合を考えてみましょう。この場合は自社の強みが技術力で、弱みは新規顧客に対する営業力だと考えられます。
老舗など歴史あるブランドの場合はブランド力や認知度が強みとなります。ブランド力は価格を上げ、顧客を惹きつけます。
例えばフェラーリは高くても売れます。ディズニーだって値上げしても顧客が沢山やってきます。フェラーリはもはやモノというよりもプレミアが付く資産と化しています。ディズニーは根強いファンが沢山いるので、高くても行きたい場所なのです。
ブランド力はこのようにとても強力なものですので、強みと捉えられます。
その他にも財務体質も強みあるいは弱みとなります。キャッシュを安定して得られる企業(サブスクリプションなど月額定期収入がある企業)、自己資本比率が高い企業は財務体質が安定しています。
逆にキャッシュを安定して得られない企業、自己資本比率が低い(負債比率が高い)企業は財務体質が安定していません。
企業は計算上は黒字でも資金繰りが行き詰ると倒産します。よって倒産しにくさという観点では財務体質の安定性は重要です。
その他にも自動化された設備など、生産性の高い設備も該当するでしょう。昨今はファクトリー・オートメーション、デジタルツイン、スマートファクトリー、サイバー・フィジカル・システムなど工場のIT化が進んでいます。
https://www.mdsol.co.jp/column/column_123_2169.html
こういうIT投資に力を入れて高い生産性を実現していることも十分に強みたりうると私は考えています。
機会に該当する要因
先ほどDXやAIについて書きました。これらは企業にとっては投資の機会です。
また円安が問題視される近年ですが、輸出企業にとっては機会となります。日本製品は品質が高いイメージがあり、東南アジアのような新興国での需要も増えています。
円安によるインバウンドの増加も機会です。インバウン丼という高級どんぶりがネタになる昨今ですが、私は高級品でしっかり稼げばいいという考えです。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2405/26/news048.html
逆にあなたが海外旅行に行くことを考えてみてください。安いお店で節約したいですか?せっかくだから現地の名物を多少高くても食べてみたいと思いませんか?
だからインバウンド客には日本の高級品を提供してしっかり稼げばいいと私は考えています。
私の友人が以前バーで働いていたのですが、インバウンド客が1杯5,000円の山崎のウィスキーをよく頼むというのです。ちなみに山崎は1本2万円くらいする高級ウィスキーです。ザっと楽天市場を見ても、2万円近いです。
なぜインバウンド客がこんな高級ウィスキーを頼むかと言えば、せっかく日本に来たのだから日本のものを味わいたいのです。だったら提供してガッツリ稼げばWin-Winじゃんと。
このように機会はニュースを見たり、街やお店に行ったりすれば見つかる可能性があります。アンテナの感度が重要ですね。
その他にも個人という観点では、転職がしやすくなったということが挙げられます。転職によって新たにやってみたい仕事にチャレンジしたり、キャリアアップを図ったり、同じ業界内でもより条件がいい会社に移ったりできるようになりました。
会社に滅私奉公しなくてよくなったとも言えます。これは十分に機会と言えます。逆の視点で言えば、企業はもう従業員が一生滅私奉公してくれるものだという前提でいてはいけないということでもあります。
脅威に該当する要因
最後に脅威についても書いておきます。
昨今では脅威と言えば物価高でしょう。多くの企業が利益を減らしており、やむを得ない値上げをしています。
値上げに対する不満は誰しもあるでしょうけど、値上げをしないと企業の利益が無くなってしまいます。すると雇用を維持できずリストラしてしまうとか、給料やボーナスが減らされてしまうというリスクがあります。
脅威の例としては他にも法規制もあります。派遣やネット金融の規制緩和がいい例です。派遣社員は規制緩和によって21世紀以降に急激に増えました。ネットバンクやネット証券、ネット保険もインターネットの普及とともに急速に増えました。
異業種の新規参入も脅威の例に挙げられるでしょう。ECが増えたことでリアル書店が減り、スマホの普及によりデジカメの需要が減りました。
ここまでは企業の例ですが、個人の観点ですと「貯蓄から投資へ」となったために投資詐欺が増えているという脅威もあります。
新NISAや投資本の充実などにより投資がやりやすくなり、本業に投資の収入を加えやすくなった一方で、投資詐欺も増えてきました。芸能人が投資詐欺に引っかかったというニュースもありました。これは機会と脅威の表裏一体ですね。
強み、弱み、機会、脅威の4つの組み合わせから立てられる戦略
強み、弱み、機会、脅威を洗い出すことができたら、これらを2×2のマトリックスにして、これらの組み合わせから4つの戦略を立てられます。
強み×機会の戦略
強みと機会の組み合わせでは、強みと機会を活かします。チャンスを取りに行くということです。例えば自社が作っているカテゴリーの製品が流行しだしたら、営業に力を入れて受注を増やし、生産設備も増強するなどです。
昨今ですとインバウンド需要を取り込むためにホテルが建てられたり、インバウン丼が開発されたりしていることでしょう。
さくらインターネットがデジタル庁のガバメントクラウドサービス提供事業者に選ばれたことで、設備投資に励んでいます。そのための資金調達もしています。これも自社の強みと機会が組み合わさったから取り組んでいることです。
https://www.sakura.ad.jp/corporate/information/newsreleases/2023/11/28/1968214232/
https://www.sakura.ad.jp/corporate/wp-content/uploads/2024/04/240426-ir_4.pdf
弱み×機会の戦略
機会があるのなら弱い分野でも何かしらの方法で補完して取りに行くという選択肢もあります。私個人の考えとしては、リソースに余裕がないなら強みの分野に集中した方がいいと考えますが、ここは人それぞれかもしれません。
弱みを補完して機会を取るなら、例えば提携という方法があります。大企業ならM&Aも選択肢に入るかもしれません。
こうすれば自社が弱い部分を補える企業を味方にすることで、自社の弱みを補えます。
強み×脅威の戦略
強みの分野で競合が現れたときは、強みを更に高めるとか、競合を分析して差別化することで対応しましょう。
代替品については代替品を研究して、自社の製品・サービスを進化させるという方法があります。
物価高や原材料費の高騰などに対しては、値上げをしなければ利益が無くなってしまいます。強みとなる分野なら値上げを行いましょう。
市場が衰退しているのなら、強みを活かして違う市場を探しましょう。
有名な話だと富士フイルムはデジカメの登場によってアナログカメラのフィルムが衰退するため、光学技術を活かす事業を模索しました。化粧品事業を始めたのもこの頃です。
https://holdings.fujifilm.com/special/90th/ja/history/
弱み×脅威の戦略
弱みの分野で脅威となる事象が発生したら、さっさと撤退するのが吉です。分が悪い戦いは避け、強みや機会を活かせるような分が良い戦いをしましょう。
SWOT分析をやるメリット
SWOT分析をやることで自社の強みや弱みを知ることができます。なんとなく知っていたという場合であっても、明確化や深掘りができます。
またSWOT分析をやることで外部環境に目を向け、機会と脅威について検討したり情報収集したりできます。
そして強み、弱み、機会、脅威を洗い出すことで、次の戦略を考えられます。これによりやるかやらないかという判断に役立ちます。機会があればやりますし、弱みの分野で脅威ならやりません。
SWOT分析をやるときの注意点
SWOT分析に限らずフレームワーク全般に言えることですが、当てはめて満足して終わりでは行けません。次の手につなげてこそ意味があります。
SWOT分析をしたら、小さくてもいいのでアクションを起こしてみてください。
SWOT分析の例
ここからは実在する企業でSWOT分析をした例を紹介していきます。全てにおいて、ここで紹介する内容が模範解答ではありません。私が見落としている観点もあり得ます。あなた自身の手でもやってみてください。
タリーズをSWOT分析した例
まずはコーヒーチェーンのタリーズでSWOT分析をします。理由はスターバックスが事例として使われ過ぎているため、あえて別のチェーン店にしてみたかったからです。
私がタリーズをSWOT分析した例を掲載します。
観点 | 分析内容 |
---|---|
強み | ・コーヒーの味へのこだわり (豆選び、国内焙煎、全自動ではなく半自動での抽出など)。 ・フードメニューがあるためランチ収入が期待できる。 ・親会社が伊藤園なので経営が安定している。 ・親会社が伊藤園のためスーパーやコンビニでも販売される (収入源が多い)。 |
弱み | ・スタバのような解放感が店舗デザインにない(店舗デザインが平凡)。 ・スイーツメニューが少ない。 ・分煙の店舗ではタバコのにおいが気になる。 |
機会 | ・紅茶に力を入れた&TEAショップが店舗数拡大中。 ・公民連携の店舗を出店できる可能性。 |
脅威 | ・急激な円安による物価高。 ・コーヒー豆の世界的な高騰。 |
タリーズの強みに関する解説
タリーズの強みについて調べていて、また私自身もタリーズによく通っていて感じたことは、コーヒーが美味しいことです。味に関してはスタバもタリーズも大差ないように感じますが、タリーズは美味しいという声は検索しているとよく見かけました。
強みの欄にも書きましたが、タリーズは豆選びから国内焙煎による鮮度、あえて手間のかかる半自動での抽出など、味のためにこだわっていることがあります。
https://toyokeizai.net/articles/-/332618
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c1da280f32e01b5474ed54ae15a08805c843623
ちょっと話はそれますが、面白い視点の記事もありました。
またカフェとしては珍しくフードメニューがあります。ここでいうフードはスイーツではなく、ランチなど食事として取れるメニューです。
プロントもフードメニューが充実していますが、プロントは主にランチで使うお店と感じられます。ドトールはミラノサンドというフードメニューがありますが、これは朝食に良さそうなボリュームですね。ランチには少ないかもしれません。
またタリーズは実は伊藤園のグループ会社だったりします。大企業が親会社なので経営の安定性は高いでしょう。
そして伊藤園からコンビニやスーパーで販売する飲料としてタリーズのコーヒーが出ています。そういえば私もリモートワークになる前はコンビニで買って飲んでいました。
タリーズの弱みに関する解説
正直言ってタリーズの弱みは悩ましかったです。目立って弱みと言えることが見当たらなかったからです。
そこでスタバを比較してみることにしました。
スタバと比較すると店舗デザインのお洒落さはスタバに軍配が上がります。タリーズの店舗デザインは普通です。
またスイーツメニューもスタバの方が魅力的です。スタバの方が種類が多いですし、季節限定メニューもあります。しかしタリーズのスイーツは種類が少ないです。
私はスタバよりタリーズに行くことの方が多いです。コーヒーがタリーズの方が好みとか、席がスタバは窮屈という理由があるのですが、スイーツに関しては買ってみようかなという気になったことがありません。
その他の弱みとしては、調べていたらタバコの煙という意見が見つかりました。タリーズはオフィス街への出店が多いため、喫煙席があったそうです。私はコロナ禍になってからカフェに行く機会が増えたため、知りませんでした。
https://cafe-tatsujin.com/tullys-smorking-2020.html
健康増進法による受動喫煙防止の影響をタリーズはもろに受けたわけですね。今ではちゃんと分煙化されていますが、喫煙ルームへの人の出入り時にタバコ臭くなることはありますし、タバコを吸った人が席に戻ってくると、その人自身がタバコ臭かったりします。
分煙はタリーズに限りませんし、私がたまに行く近所のエクセルシオールも分煙です。しかし全席禁煙のカフェは少なくないようですので、弱みに含められるかもしれません。
https://cafe-tatsujin.com/smorking-2020-matome.html
タリーズの機会に関する解説
タリーズは一部だけ公民連携の店舗があります。地元の名産品をPRできる店舗としているようです。
https://www.tullys.co.jp/company/action/society/soc08.html
こういう店舗の認知度は低そうですが、試みとしては面白いと感じます。
またタリーズは紅茶に力を入れた&TEAという店舗を展開しています。
https://www.enjoytokyo.jp/article/109243/
この紅茶の店舗が伸びているようです。コーヒーチェーンで紅茶の店舗が伸びるなんて意外な発見ですよね。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2406/06/news007.html
タリーズの脅威に関する解説
一方で脅威としては昨今の円安による物価高でコストが上がっていることがまず挙げられます。これでは値上げせざるを得ません。コーヒーもここ2年で30円くらい値上がりしました。
また私が個人的にカルディの店員から聞いた話ですが、コーヒー豆自体が世界的に高騰しているそうです。
コーヒー豆を生産できる地域が限られます。しかし世界的には人口が増加しており、新興国では国民の所得がドンドン上がっています。
こうなるとコーヒー豆という限られた資源をより多くの国が求めるようになるため、取り合いになるのです。供給量はそのままに需要が上がるのだから価格は高騰するわけです。
コーヒー豆の価格が高騰すれば、ほぼすべてのカフェは影響を受けるでしょう。コーヒー豆を自社で栽培しているとか、自社と専属契約を結んでいる農園があるのなら話は別ですが。
セリアをSWOT分析した例
続いて100均ショップのセリアをSWOT分析してみましょう。これまたタリーズの例のようにシェアNo.1ではない企業を選んだ理由は、事例として取り上げられる機会が少ないから面白そうという理由です。
私がセリアをSWOT分析した例を掲載します。
観点 | 分析内容 |
---|---|
強み | ・他の100均と比較してデザイン性に優れる。 それゆえ女性客の比率が高い。 ・お洒落な雑貨を扱っている。 |
弱み | ・食品を置いてあるのが一部の大型店舗だけ。 ・100円の商品だけで利益を出さなければいけない。 |
機会 | ・メディアへの登場 ・海外進出 |
脅威 | ・急激な円安による物価高。 ・人件費(主に最低賃金)の高騰。 |
セリアの強みに関する解説
セリアの強みは何と言っても、他の100均よりもデザイン性が高く、お洒落な商品が多いことです。それゆえ女性客の比率も高いそうです。
セリアの店舗には見ていて面白いお洒落な雑貨も沢山あります。主に飾る雑貨ですね。キッチン雑貨もお洒落なものがあります。
私個人としてはこういう細かい雑貨がいいなと感じます。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e772a88304d2ee88aca4d14dbdb487281f3753b5
他にもセリアはメーカーとの共同開発品が9割を占めるそうです。これは重要なポイントですね。自社だけの商品を作りつつ、メーカーも在庫を抱えるリスクを抑えられ、Win-Winにできます。
セリアの弱みに関する解説
一方でセリアの弱みは食品を置いてある店舗が一部の大型店だけであること、100円の商品しか扱っていないため、利益を出すのが難しいことが挙げられます。
100均には缶詰や混ぜるだけ系のお手軽な調味料、お菓子などが沢山あります。これらは安くて便利です。しかしセリアにはこういうものがありません。置けば稼げるだろうけど、自社の売りたい商品を売るためにあえて置いていないのでしょう。
弱みを調べても見つからないときは、業界トップ企業と比較した記事を探すという方法もあります。100均ならダイソーと比較するわけですね。
この記事だとセリアの強みと弱みがダイソーと比較して解りやすいです。人気商品が品切れしやすいという弱みも掲載されています。
しかし私はセリアによく行きますが、あまり品切れを感じたことがありません。確かに在庫量で言えばダイソーの方が明らかに多いですが。
https://kt-labo.co.jp/kurashirube/seria-vs-daiso/
セリアの機会に関する解説
セリアの機会としてはメディアへの登場と海外進出が考えられます。
セリアはTVやネットのニュースサイトで取り上げられることもあります。認知度が十分にあって顧客の入りも多い会社だから取り上げられます。そしてTVやニュースサイトで取り上げられると、見た人がお店に通うので集客効果が発生します。
続いて海外進出について考えてみましょう。
セリアの今年の決算説明資料によると、海外売上も若干あるようです。売上高が2,230億円で、卸売りと海外の合計が8億円です。海外売上は極めて小さいです。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2782/ir_material_for_fiscal_ym/156053/00.pdf
しかしダイソーやキャンドゥなど他の100均は海外店舗を多く持っていますので、海外にチャンスはあるでしょう。
セリアの脅威に関する解説
脅威は言うまでもなく昨今の急激な円安による物価高でしょう。これはセリアに限らず100均全社に影響します。
100円のまま量やサイズを減らすのか、120円均一など価格を上げていくのかは解りません。ダイソーで150円や200円の商品をよく見かけるようになりましたが、150円になってしまうかも解りません。
こんなとき100円の商品しか展開していないセリアには悩ましい決断が迫ります。150円や200円の商品も売るのか、120均一などにするのか、100円のまま量やサイズを減らすのかです。
物価高によりコストは高騰していきますので、いずれコストが100円になれば利益を出せないという話になりますから。
また100均では最低賃金の上昇も脅威となります。100均に限らずチェーン店という形態ほぼ当てはまることです。
100均を始めチェーン店はパートやアルバイトに大きく依存しています。パートやアルバイトの従業員は最低賃金に触れるような時給で働いていることも少なくないため、最低賃金が上がれば昇給させることになります。
つまり最低賃金が上がれば人件費が上がりますので、その分だけコストダウンを図るか、値上げをするしかありません。しかし最低賃金はずっと上昇傾向です。
もちろん給料は上がった方がいいです。しかし企業としては給料を上げる分だけ稼ぐという意識が必要になります。稼がなければ昇給の原資を確保できませんので。
昨今のセリアではセルフレジの導入によって店員の負荷を減らしています。全ての店舗に導入されているわけではないと思いますが、私が何件が通っている範囲では、ほぼ導入されています。
イオンモールをSWOT分析した例
次はイオンモールをSWOT分析してみます。通う人が多い商業施設だから馴染みやすいでしょう。
観点 | 分析内容 |
---|---|
強み | ・商業施設を自前で持っており、テナントが沢山入っている。 ・ネームバリューで集客力が高い。 ・イオンのスーパー、ドラッグストアでついでに買い物が可能。 |
弱み | ・古い建物が多い。 ・郊外の店舗が多く、駅近の店舗が少ないため、アクセスが良くない。 |
機会 | ・新興国の所得増加。 ・インバウンド需要(成田店など)。 |
脅威 | ・地方への出店も多いが、地方人口は減少ペースが速い。 ・メインターゲットのファミリー層は結婚率や少子化で減少傾向。 |
イオンモールの強みに関する解説
イオンモールの強みは解りやすいと思います。
まず自前で沢山の建物を持っています。だからテナント料を稼げます。またイオンはネームバリューが高いので集客力が高いです。
よってイオンモールにテナントとして入るメリットがあるお店は沢山あります。集客できてテナント料も稼げるのです。
株をやっている方はご存じかもしれませんが、決算短信や決算説明資料を読むと、実は賃貸収入をちゃっかり持っている企業はよくいます。なぜなら賃貸収入は割が良くて安定しているからです。昨今会社員の副業として不動産投資に人気があるのも、安定した家賃収入が得られるからです。
その他には、テナントで色々買い物した後に、ドラッグストアで日用品を買い、イオンのスーパーで夕食を買って帰るということも可能な点が強みとして挙げられます。
商業施設の地下にはよくスーパーが入っていますが、必ず入っているとは言えません。イオンモールはほぼイオン系のスーパーが1階に入っています。
またイオンモールは郊外に店舗があるため、車で来る人が多いでしょう。その人たちが帰りに夕食を買って帰るのにちょうどいいわけです。
イオンモールの弱みに関する解説
イオンモールの建物は古いものも多いです。つまり修繕や建て替えが必要な建物が多いということです。
建物はお金がとてもかかります。特に建て替えとなると多額の融資や社債が必要です。
またイオンモールはルミネやマルイ、デパートなどと違って駅近にある店舗が少ないです。駅近の店舗はレイクタウン、岡山、横浜と言ったところでしょうか。多くの店舗は郊外にあり、車かバスで通う必要があります。アクセスという面では他の商業施設に劣ります。
イオンモールの機会に関する解説
近年、新興国では所得が増加しています。それと合わせてか、日本の小売業や飲食業が東南アジアなどに進出しています。大戸屋や丸亀製麵、ニトリ、イオンなどが代表例です。
私は2019年から2024年までイオンモールの株主でした。株主通信を読んでいると、SDGsと海外店舗に関する内容が目立ちました。イオンにとって新興国の所得増加による消費意欲の増加は機会なのです。
また最近はコロナ禍前のようにインバウンド客が増えています。以前から日本の小売業は免税店を出して、インバウンド需要を取り込んできました。
イオンモールもインバウンド対策もしています。それが成田の店舗です。
https://www.rakumachi.jp/news/column/340032
イオンモールの成田店ではフードコートに海鮮丼があったり、扇子などの和雑貨やアニメなどの日本のIPコンテンツ、着物などを扱うお店が入っているそうです。
さらにはウェルシアが免税店になっているそうです。上記の記事によると、日本のコスメがインバウンド客に売れるそうです。化粧品なんてどこの国にもありそうですが、日本の方が品質が高いということなのでしょう。
イオンモールの脅威に関する解説
イオンモールの脅威としては、地方の人口減少や、メインターゲットであるファミリー層が結婚率の低下や少子化で減っていることが考えられます。
ついに最近は一人暮らしの世帯が最大になったそうです。それほど結婚しない人が増えているということです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b3208b1332fc74f6202014a60128cb71f36e5f93
ただしイオンモールには色々なテナントが入っているので、ファミリー層の減少は単身者に受けるお店をテナントとして入れることで補えそうではあります。しかしその方向性で行くなら中途半端になるので、ブランドを分けた方が安全な可能性もありますね。
終わりに
今回はSWOT分析のやり方について解説し、実在の企業を例にSWOT分析をやってみました。
企業にしても個人にしても、SWOT分析を活用すると、自社・自分と世の中のマクロ環境の現状を把握できます。そこから次の手を考えることができます。是非有効活用してください。