サービスプロフィットチェーンを企業の事例でわかりやすく解説

最終更新日

サービスプロフィットチェーン

近年は従業員満足度という要素が重要視されるようになってきました。不満を抱えてモチベーションが下がった従業員と、満足していてモチベーションが高い従業員では、どちらが顧客にいいサービスを提供できるか明らかですよね?

当然ながらいいサービスを提供できた方が、顧客からの評価は上がります。よって客単価が上がったり、顧客を維持しやすくなってLTV(Life Time Value。顧客生涯価値)も上がります。

そこでサービスプロフィットチェーンというフレームワークの登場です。

今回はサービスプロフィットチェーンについて解説します。そして企業の事例を挙げます。次のような方の参考になれば幸いです。

  • 経営戦略を学んでいる方
  • ビジネススキルアップに励みたい方
  • 管理職やプロジェクトマネージャーなどマネジメントに携わっている方
  • 総務や人事の方
  • お店を経営している方

最初に参考書籍を挙げてきます。私が持っている書籍の最新版です。長く増刷されているフレークワークの書籍ですが、AI時代になって新版になりました。

最強フレームワーク AI時代の知的生産力が劇的に高まる [ 永田 豊志 ]

サービスプロフィットチェーンとは

サービスプロフィットチェーンとは、従業員満足度を高めれば従業員のモチベーションが上がりいい仕事をするようになるため、顧客満足度が上がって業績が上がるという流れを表したフレームワークです。

当然ながら会社に不満を抱えている従業員はモチベーションが低くなります。不満がある会社のためにいい仕事をしようと思わないでしょう。

一方で会社に満足していて会社を気に入っていれば、会社のためにいい仕事をしようと思うでしょう。

業績を上げたかったら、まずは従業員の満足度を高めることが重要なのです。

そして従業員がいい仕事をすれば顧客満足度が上がります。顧客満足度が上がれば、顧客はより多くの商品・サービスを買ってくれるので、客単価が上がります。

また顧客が離れてしまうリスクも減り、顧客が継続的に自社の商品・サービスを買ってくれることも期待できます。その結果としてLTVも上がります。

顧客満足度は長年に渡り重要視されてきましたが、従業員満足度が重要視されるようになったのは近年です。ただでさえ仕事は真面目にキッチリやって当たり前という社会常識があるからでしょう。

しかし従業員が不満を抱えた状態でいい仕事ができるわけがないということが知られるようになってきました。これはいいことです。

サービスプロフィットチェーンの構造
サービスプロフィットチェーンの構造は対社内と対社外に分かれます。最強フレームワークp100~101を参考に作成。

サービスプロフィットチェーンの構成

従業員満足度(内部)のプロフィットチェーン

従業員満足度を高めるためには、教育投資や働きやすい職場の提供、適切な人事評価などが必要です。更に満足度を高めるなら、やりがいや自己実現がしやすいように、希望する仕事にできるだけ就かせてあげるなども必要です。

従来であれば従業員は会社の命令に忠実に従い、会社に滅私奉公することが求められました。しかし従業員満足度を本当に高めたければ、会社と従業員は対等という考えも必要です。お互いが望む要素を話合い、協力し合って仕事を進めるのです。

こうして従業員教育に投資してスキルアップし、働きやすい(残業が少ない、家庭の事情や私用で休みを取りやすい)職場とし、やりがいのある仕事をしてもらい、結果をしっかり評価します。

それによって従業員は会社から大切にされていると感じ、モチベーションやエンゲージメントが上がります。

こうして従業員がいい仕事をするようになると、顧客満足度が上がって業績が上がりますので、その分を教育投資や給料に反映するのです。これを繰り返して業績を上げていけば、好循環につながります。

顧客満足度(外部)のプロフィットチェーン

従業員満足度を高めて従業員がより良い仕事をできる環境が整ったら、それによって顧客の満足度が上がります。

たとえばお店に買い物に行ったら、不機嫌な店員より元気のいい店員の方がいいですよね?解らないことを聞いてもつっかえす店員より答えてくれる店員の方がいいですよね?

従業員がいい仕事をすることで、顧客の印象は変わります。そうして顧客の満足度が上がれば、顧客はリピートしてくれますし、自社から買ってくれる機会も増えるでしょう。

結果的に顧客満足度が上がるのです。顧客満足度が上がると顧客ロイヤリティが上がります。顧客が自社を気に入って優先的に使ってくれるようになるのです。

そうすれば継続的に購入してくれるため売上も増えますし、中には口コミで評判を広げてくれる顧客も出てくる可能性があります。

こうして従業員満足度を高めた効果によって、顧客満足度が上がって、企業の業績が上がることが期待できます。

従業員満足度を高めるためにできること

お金、やりがい、成長などをバランスよく提供する

従業員満足度を高めることは簡単ではありません。色々な要素が必要です。

多くの人は給料がもっと高かったらいいなぁと思っているでしょう。確かに給料は高いに越したことはありません。しかしお金だけのために働くのは辛いです。仕事には辛いことや大変なことも付きものですから。

そこでやりがいや成長、自己実現も必要になってきます。

やりがいとは達成感であったり、顧客やチームなど他人の役に立った満足感であったりします。

成長も仕事を通して学べることは多いので大事です。たとえばRPGを見てください。ストーリーを進めるに当たって主人公たちもレベルアップして能力値が上がっていきます。ずっとレベルが1で能力値が上がらなかったらつまらないでしょう。

仕事も同様で、やればやるほど上手くなって、できる仕事も増えていくと、成長を感じられます。すると満足度も上がってきます。

働きやすさを実現する

たとえば年収1,000万円だけど残業が毎月100時間という職場を想像してみてください。数か月なら我慢できるかもしれませんが、多くの人にとってずっとそういう職場にいることは無理でしょう。よほど体が頑丈でかつハードワークを楽しめる人でないと難しいでしょう。

働きやすさがないと長く勤め続けることは難しいです。そこで残業が少ない、家庭の事情や私用で休みを取りやすい、助け合いの文化が根付いているなど働きやすい条件が整っていることが重要になります。

残業を減らす方法に関しては別途記事を書いていますので、参考にしてみてください。

https://www.midknowledge-workshop.com/archives/category/lecture/management

休みを取りやすくするには、人手や仕事量の調節が必要なので、すぐにはできないでしょう。しかし仕事を効率化して残業を減らしていけば、いずれは徐々に実現していきます。残業が少ない会社では私用で休みを取ることは普通ですので。長年定時帰りしている私が実際にそうですから。

助け合いの文化は働きやすさにおいて特に重要です。丸投げとか自力で解決しろという考えで、誰にも助けを求められないと孤立してしまいます。これではモチベーションも従業員満足度もあったものじゃないです。

日常的に従業員個々人が助け合う、管理職が従業員を日頃からしっかり支えるなど、日常的な習慣によって助け合いの文化を作る必要があります。

内発的動機付けを上手く行う

動機付けというと給料を想像するかもしれません。確かに給料は大事ですし、仕事内容や成果に応じて昇給してもらいたいものです。

しかし給料や役職のような外発的動機付けよりも、日々の仕事の楽しさややりがい、いい仲間の方が長期的な効果があります。

ちなみに給料や役職のような外発的動機付けで与えるものを地位財、楽しさややりがい、いい仲間などの内発的動機付けに影響する要素を非地位財と呼びます。別途記事を書いていますので、気になったら読んでみてください。

https://note.com/biginuneko/n/n1b02b765fae6

サービスプロフィットチェーンを活用する企業の事例

スターバックス

スターバックスは接客マニュアルがなく、接客サービスの内容を従業員の裁量に任せています。これはアルバイトの店員でも同様です。スターバックスの店舗スタッフは各自の裁量で接客を行っています。

スターバックスに行ったら店員が親切・丁寧だったと感じたことはありませんか?スターバックスのコンセプトはサードプレイスです。店員のいいサービスがあってこそ、自宅外のくつろげる空間になるのです。

結果的にスターバックスの店舗数は圧倒的ですし、朝早い時間帯以外はいつも混んでいて中々入れません。

スターバックスのように自分の裁量で自分の仕事を決められると、やりがいの向上につながります。裁量とは本来は仕事ぶりを認められていないと与えられないものだからです。

あなたは上司から細かく指示されて監視される働き方と、自分で自由にやっていい働き方、どちらの方がモチベーションが上がりますか?経営学の世界では後者の方が多いとされています。

マイクロマネジメントは悪いことが多く、従業員を信じて任せた方がいいというのが最近のマネジメントの潮流です。ただしいきなりやらせるのではなく、必要なことを事前にしっかり教える必要はあります。教育は絶対に疎かにしてはいけません。

ちなみにマイクロマネジメントについては別途記事を書いていますので、気になったら読んでみてください。

ザ・リッツ・カールトン

ザ・リッツ・カールトンは接客サービスが最高と言われるくらいにハイレベルなことで知られるホテルです。そのサービスレベルはコーラの価格が1,000円を超えるほどです。コーラをとても美味しく飲める状態にして1,000円を超える価格で出すのです。

ザ・リッツ・カールトンではクレドなどを定めており、文化として接客レベルを実現していると私は考えます。

https://seminars.jp/media/668

昨今は高潔な文化を作るためにクレドすなわち社訓のようなものを定める企業が出てきています。とはいえ伝統的な日本企業のように、ただ社訓を言うだけでは意味がありません。従業員に腹落ちさせて言動にまで反映させる必要があります。

またザ・リッツ・カールトンでは、伝統的企業のようにただ顧客のために尽くせと言っているだけではありません。

従業員への教育投資も行いますし(どれくらい行っているかは不明ですが、ちょっとやそっとの研修では最高レベルのサービスなどできないでしょう)、顧客サービスのための2,000ドルの決裁権も持たせています。

更にはCRMを活用して顧客の理解に努めています。CRMを活用すれば、顧客の属性や特徴、対応履歴を管理できます。すると個々の顧客を理解した担当者が、その内容をシステムで全従業員に共有できるのです。

https://dhbr.diamond.jp/articles/-/1664

誇りを持って働ける職場を作り、従業員に裁量を与えて各自が主体的に考え実行するというやり方は、先進的な企業が昨今取り組んでいることです。従来のように、上層部が現場を細かく管理監督するやり方とは対象的です。

スターバックスもそうですが、自分で決められることが多い方がやらされ感が少なく自分事化するため、従業員はモチベーションが上がります。

上層部の命令に従っているだけでは高いサービスを実現することなどできません。現場の従業員への教育投資と権限委譲が不可欠です。

これは企業だけでなく、プロジェクトチームのような小さな組織でも当てはまります。言い方を変えると、人を機械の歯車として扱うか、人として扱うかということでもあります。

ディズニーランド

ディズニーランドのサービスレベルはよく知られています。スタッフをキャストと呼び、現場の従業員が顧客の感動を作り出すことで、根強いファンを獲得・維持しているのがディズニーランドです。

チケット代が上がっても人気が高いことから、ディズニーランドの強さが解ると思います。

ディズニーランドの採用ページを見ますと、5段階のステージが設けられています。スキルアップとともにランクアップして、仕事内容も時給も上がるようです。

https://www.castingline.net/career

また福利厚生もあります。割引のようなキャストをファンと位置付けているものもあれば、表彰制度や従業員食堂もあります。

https://www.castingline.net/benefit/#event

表彰制度は小売業や飲食業でもやっていますね。ミスタードーナツやセブンイレブンが行っています。こちらの記事にも書いていますので、気になったら読んでみてください。

終わりに

今回はサービスプロフィットチェーンについて解説し、活用している実在の企業を紹介しました。

サービスプロフィットチェーンで重要なことは、私個人としては、会社が自分を大切にしてくれていると感じ、楽しく活き活きと働ける職場かどうかというところだと感じます。そう感じてもらえるよう、人を認め、人を育て、人を信じて任せることが大事ですね。

企業はやはり人です。人を活かすも潰すも企業次第です。人を活かして成果を上げていきましょう。

シェアする