アジャイルにすればいいじゃない!アジャイルでも炎上はするし目的が大事
アジャイルという言葉が随分と普及し、マネジメントの論文でも目にする機会が増えました。それと同時にブログの検索キーワードを分析していると、「アジャイル 炎上」が割とあることに気付きました。
アジャイルでも休日を返上してスケジュールが遅れていく例を見たことがあります。アジャイルにすれば何でも上手くいくという意見を聞いたこともありますし、勘違いアジャイルとかなんちゃってアジャイルという話も何かと見聞きします。
そして私の所属企業のアジャイル専門家は勘違いアジャイルやなんちゃってアジャイルと呼ばれるものに反対しています。私も同感です。
今回は私がマネジメントの論文で読んだアジャイルの事例を参考に、アジャイルとプロジェクトの炎上、アジャイルを有効に活用することについて解説します。
アジャイルで上手くいっていない方、アジャイルに憧れがある方、アジャイルに疑念がある方、アジャイルの活用方法を考えている方などなど、アジャイルに関わる色々な方に参考にしていただければと思います。
アジャイルでもプロジェクトが炎上することはある
炎上はアジャイルかウォーターフォールかではなくマネジメント力の問題
ウォーターフォールで残業を強いられている方からよく聞く話が、アジャイルにすればいいという意見です。これはよくない考えだと私は考えます。
アジャイルでも成果を出せない、約束を守れないとなれば問題が発生します。つまりマネジメント力が不足していれば問題になるのです。これはアジャイルもウォーターフォールも、どちらも同様です。
アジャイルかウォーターフォールか以前に、マネジメント力がなければプロジェクトを回すなどできません。
顧客に価値を届けることが大事
アジャイルサムライというアジャイル界隈で有名な教科書があります。この教科書の序盤で、(マネージャーであるあなたは)毎週顧客に動く価値を届けないといけないと出てきます。イテレーション毎に顧客に価値を届けることがアジャイルでは大事なのです。
アジャイルサムライ 達人開発者への道 [ ジョナサン・ラスマセン ]
ということは必然的にマネジメントを上手くやらないといけないということになるのです。
マイペースにやってもいいではなく、短期間で顧客に価値を届けなければいけないのです。
期限までに価値を届けること必要がある
会社都合、他社との都合などで仕事には期限があることが一般的です。期限を守れなければ当然ダメです。アジャイル的に言うならば、期限が近い作業から順にこなすという話です。
期限を守るため、顧客に価値を届けるためであれば、ハードな働き方だってときには発生するでしょう。マネジメントに失敗すれば、リスケの調整も必要です。
短期間で成果を出すということは、例えて言うなら期末試験を睡眠を削って頑張るとか、資格試験を短期集中型の勉強でこなすようなものです。決して余裕があるものではありません。
だから期限までに顧客に価値を届けられなければ、当然トラブルになります。だからアジャイルでも炎上します。実際に私は、アジャイルで休日返上してもマイルストーンがドンドン後ろにずれていくというプロジェクトを見たことがあります。
勘違いアジャイルはダメ
勘違いアジャイルは都合のいい解釈でしかない
勘違いアジャイル、なんちゃってアジャイルと呼ばれるものがあります。私はこれは勝手に都合の良い解釈をしているだけで、論外だと考えています。
これはウォーターフォールのシステム開発プロジェクトで、プロジェクトが炎上して振り回されている人たちが中心になって言っていることなのかなと私は推測しています。
勘違いアジャイルというのは下記のようなことを考えているやり方です。
- 計画を立てなくていい
- 顧客と調整しなくていい
- ドキュメント(資料)を作らなくていい
- 残業しなくていい
- 上手くいかなければ毎週リスケしていい
- モノづくりだけやってればいい
これじゃ趣味と変わりません。顧客には顧客の都合があります。こんな自分たちに都合がいい解釈では、顧客に価値を届けるなどできません。これでは顧客価値を考えていない、言われたことだけやっている人たちです。
こんなやり方で顧客に貢献することはできません。やりたくないから、面倒だからと感じる作業をやらないことを正当化しているだけです。
アジャイルでやらなければいけないこと
顧客には顧客の課題や都合がありますので、中長期的な計画は必要ですし、短期的にはイテレーション毎にやることを決めないといけません。
アジャイルでは動く価値を顧客に届けるとアジャイルサムライには書かれています。顧客価値を追求する以上、顧客との調整は重要視しなければいけません。
ドキュメントだって「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを」とアジャイルソフトウェア宣言で言われているのであって、作らなくていいのではなく、必要な分だけ作るという話です。
よって顧客とのコミュニケーションに必要ならば、ドキュメントを作る必要があります。
アジャイルでも目的は大事
アジャイルはあくまでも手段です。不確実性への対応として柔軟性や敏捷性を高めた手法です。
アジャイルは元々は製造業が新製品の開発に使っていた手法を、IT業界が取り入れたものです。ビジネス環境の変化が激しくなって、従来のシステム開発手法であるウォーターフォールでは変化の速さについていくのが難しくなったからです。
つまり変化の激しい時代にあって、新製品開発やシステム開発、業務改革などやりたいことをやるために、柔軟性や敏捷性の高い手法が必要というわけです。
アジャイルを採用して何をやりたいの?これをよく考えてみてください。やりたいことがあるけど、不確実性とか状況変化の速さが悩ましいからアジャイルでやるんだよね?ということです。
アジャイルが有効なケース
やってみなければ解らないことには有効
未知のことや前例がないこと、やってみなければ解らないことなどはアジャイルが有効です。逆にゴールが決まっていてやり方も解っているなら、ウォーターフォールの方が最短距離で進めます。
前例がない活動にアジャイルが有効という話はこちらの記事にも書いています。
マネジメントの論文を読んでいても、新しい取り組みや変革において、小さく始めて成功体験を積む際にアジャイルが使われる事例がよく出てきます。
やりながらノウハウを確立する場合にも使える
検証しながらノウハウを確立していく活動にもアジャイルが使えます。新規事業や新製品開発などが該当するでしょう。
獺祭の開発ではアジャイルのように1週間ごとに、やることを決めて作って、振り返りを行っています。獺祭は職人ではなく普通の会社員が作っています。普通の会社員が酒造りを行うためには、ノウハウ面で様々な苦労があったわけです。
このようにやってみないと解らないことにもアジャイルは有効です。
終わりに
アジャイルにすればいいってもんじゃない、勘違いアジャイルやなんちゃってアジャイルはダメというのが私が言いたいことです。
そしてアジャイルならマネジメントが不要なわけではありません。アジャイルではキャッチアップが困難なくらいに色々な方法が考案されています。
アジャイルに関する勘違いが減り、アジャイルが有効活用されるようになればいいなと思います。マネジメント力をちゃんと磨いて、アジャイルを有効活用していきましょう。