心理的安全性の高い職場の特徴と高める方法を実体験から解説

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心理的安全性

心理的安全性という言葉をよく聞くようになりました。従業員エンゲージメントや従業員のパフォーマンスが重要視される昨今において、とても効果的な概念だからでしょう。

私の意見としては、他人に気を使える人は心理的安全性が提唱される前からやっていたと思います。とはいえできる人ばかりではないからもてはやされているのでしょう。

今回は心理的安全性とは何かについて解説した後、私が今まで所属したことがある職場の中で、心理的安全性が高いと感じた職場の特徴を解説します。その後で私がマネジメントする際に、心理的安全性を高めるために意識していることを解説します。

心理的安全性について勉強している方や、心理的安全性とは何かを知りたい方、マネジメントに携わっている方などの参考になれば幸いです。

最初に参考書籍として、心理的安全性の提唱者であるエイミー・エドモンドソン教授の本を紹介しておきます。

恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす [ エイミー・C・エドモンドソン ]

心理的安全性とは

心理的安全性とは、みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化のことを指します。

心理的安全性がある組織は提唱者であるエイミー・エドモンドソン教授の本のタイトル通り、恐れのない組織です。普通の組織であれば、上司に意見をするなど身の丈をわきまえぬ非常識な行為です。しかし心理的安全性がある組織ではそれが許されるのです。

心理的安全性がある組織は次のようなことを実現しています。

  • 上司や先輩に自分の意見を言うことができる
  • 上司や先輩のミスを指摘してもよい
  • 間違えたことを言っても恥をかかない
  • 初歩的なことを聞いても無知だと笑われない
  • 失敗しても責められない

逆に心理的安全性がない職場は次のような状態になっています。

  • 上司や先輩に自分の意見を言ってはいけず、上司や先輩の言うことに忠実でなければならない
  • 上司や先輩のミスを指摘してはいけない(恥をかかせてしまう)
  • 間違えたことを言ったら恥をかく
  • 初歩的なことを聞いたら無知だと笑われる
  • 失敗したら説教されるか始末書をかかされ、厳しい処罰もある

心理的安全性がもたらす効果

トラブルを未然に防止できる

心理的安全性がある職場では、部下や後輩が上司や先輩に意見を言うことができます。ときには上司や先輩のミスを指摘することもあります。

たとえ上司や先輩であっても、間違えることはあります。それを部下や後輩が指摘できれば、トラブルを未然に防げる可能性があります。

学習を促進できる

伝統的な職場では失敗をする度に説教されました。同じ過ちを犯さないように厳しく言いつけるという考えが、伝統的な職場では一般的な教え方でした。

しかし説教ばかりでは、従業員は説教されないために失敗や不都合なことを隠すようになります。そして最悪の場合には不祥事として発覚してしまいます。

心理的安全性がある職場では失敗をしても説教されることがありません。むしろ失敗はするものとして、そこから学ぶことが推奨されます。失敗から学ぶことで従業員は知見を増やしてスキルアップできるのです。

業務効率を改善できる

伝統的な職場では上司に物申すなど自殺行為でした。偉そうな態度であると説教されるのが目に見えていますし、エイミー・エドモンドソン教授の本でも、「上司に意見を言ったら職を失ってしまう」というインタビューが紹介されています。

しかし心理的安全性がある職場では、部下が上司に意見を言えます。つまり現場の業務を効率化するアイディアを従業員が思いついたら、上司に言うことができるのです。

アイディアが出る職場になれば、その中から採用されるアイディアもいくつか出てくるでしょう。そうなれば業務が改善されて効率も上がるでしょう。ときには新製品の開発につながるかもしれません。

従業員エンゲージメントが高まる

心理的安全性がある職場では、従業員は自分の意見を言えることで自分が認められていると感じます。また説教される恐れや無茶なノルマを強制的に押し付けられる恐れもありません。

それゆえ働きやすい職場となります。働きやすい職場となれば当然モチベーションにも良い影響を与えます。またこの職場で頑張ろうと思えるので、従業員エンゲージメントも高まります。

ちなみに従業員を大切にすることでモチベーションを上げると、いい仕事をするようになって顧客満足度が上がるというフレームワークがあります。サービスプロフィットチェーンと呼ばれるものです。

心理的安全性を実現すればサービスプロフィットチェーンにも良い影響を与えられることを期待できますね。

心理的安全性が低い職場の問題点

トラブルにつながるミスを指摘できない

エイミー・エドモンドソン教授の本でも、部下や後輩がミスに気付いたけど指摘できなかったせいで、トラブルに発展してしまった例が多数紹介されています。

上司や先輩のミスを指摘するということは、見方を変えると、上司や先輩に恥をかかせることでもあります。また上司や先輩に対して上から目線の態度を取ることでもあります。

部下や後輩からしても、指摘しても怒られるだけです。だから部下や後輩は黙っておくという選択を取ってしまいます。

不祥事につながる

エイミー・エドモンドソン教授の本では、フォルクスワーゲンの不正が紹介されていました。経営陣が無茶なノルマを課したゆえに、エンジニアは不正を行うプログラムを開発してしまったそうです。

心理的安全性がない職場では、部下は上司に意見を言うことが許されず、黙って言うことを聞くしかありません。また失敗や問題が発生すれば厳しく説教されます。

そうなると部下は自分を守るために問題を隠蔽するか、問題があっても言っても無駄だからと黙ってしまいます。これを繰り返せばいずれ不祥事につながることもあるでしょう。

近年の日本のニュースではビッグモーターの不祥事がありました。役員が現場に無茶なノルマを課し、現場は役員に逆らえないため不正なことをしてしまったのです。

こちらの根性論はダメという記事に、ビッグモーターの不祥事についても書いています。気になったら読んでみてください。

従業員エンゲージメントが低くなる

言われたことだけを黙ってやれ、口答えするな、失敗やミスをする度に説教、問題が発生する度に説教…そんな職場をいい職場だと思って前向きに働けますか?そんな職場でモチベーションを保てますか?

私はそんな職場に不本意にも入ってしまったことがあります。そして仕事とは厳しいものだからとか、厳しさに耐えてこそ社会人、甘えるなと説教されました。

とてもバカバカしくてやってられませんでした。

心理的安全性がない職場では従業員エンゲージメントが低くなります。自分が大切にされていると感じることはできませんし、ただの歯車としか感じられないでしょう。

私が体験した心理的安全性の高い職場の特徴

私自身、自由と裁量を求める働き方を追求してきましたし、そういう考えの会社で自由にやらせてもらってきました。その体験から心理的安全性が高いと感じる職場の特徴を解説します。

個人の裁量が大きい

私が心理的安全性があると感じた職場は個人の裁量が大きかったです。

言われたことだけをやっていろと怒られることはなく、マイクロマネジメントもありませんでした。「大人なんだから自分でできるでしょ?」という放置プレイなスタイルでした。

世間一般から見ると、このような職場はちゃんと人を管理できていないいい加減な職場かもしれません。しかし任せてもらえるからこそ頑張ってみようと思えました。

ただの歯車で命令に忠実になれ、口答えするなではモチベーションなんて出ません。でも任せるから好きにやってみろなら、自分が認められていると感じるので、モチベーションが出ます。

自由に意見を言える

私が体験した自由と裁量の職場では、こういうやり方はどうかという意見や、こういう仕事をしたいという希望を言っても怒られませんでした。

私が体験した上から言われたことだけやってろ、かつ説教が当たり前の職場では、意見や希望を言ったら説教されました。私はあまりに腹が立って、何度もケンカをしてしまいました。

意見や希望を言う人の方がどうかしている、常識がない、空気が読めないと何度も言われたものです。「言われたことだけやって無難にやり過ごせばいい。仕事なんて真面目になったら負け、むしろ働いたら負け」なんて同僚に言われたものです。

私が体験した自由と裁量の職場では、意見を言わない人は存在価値が危ういくらいでした。役に立ってないという意味です。みんな活発に建設的な意見を言い合う文化だからです。

競争より協調を尊重する

残念ながら伝統的な人事制度では、従業員同士に出世競争をさせて、生き残った人を勝ちとします。すると中には自分の給料を上げるために妨害をしてくる同僚も出てきます。

わざと仲間外れにしたり、嘘の噂をばらまいたり、暴言を吐いてやる気を損ねようとしたりする同僚も出てきます。

でも心理的安全性がない職場ではそういうことが普通に許されてしまいます。それどころか競争心があって偉いとそのような同僚が褒められている職場すらありました。

私が働きやすいと感じ、なおかつ少ない残業時間で顧客に成果も収めている職場は、協調を尊重しています。

先ほども書いたように、仕事の進め方に関する議論も活発ですし、同僚同士の蹴落とし合いや愚痴の言い合いも少ないです(0とは言えないこともあるのが残念ですが、人が沢山集まれば仕方ないのでしょう)。

心理的安全性が高いと感じる職場では、チームで協力して成果を出すという意識が強いのです。エイミー・エドモンドソン教授の本でも、心理的安全性が低い職場ではミスを見て見ぬ振りをするという話がありました。薬の投与量を間違えたというケースですね。

議論が活発

私が体験した自由と裁量の職場では、上からの命令が絶対ということはなく、黙って言うことを聞けということもなく、言いたいことは言っていい、いやむしろ活発に議論するのが当たり前という雰囲気でした。

一方で言われたことだけやっていろという職場では、活発に話されるのは愚痴ばかりで、議論なんて見たこともありませんでした。言われたことと決められたことをやっていればいいという雰囲気でしたので。

活発に議論することで、アイディアも出ますし、何より仕事の進め方について議論するので、残業がとても少ないのです。

言われたことだけやってろの会社は残業が60~80時間くらい普通だったのに、自由と裁量があって活発に議論する職場は残業が20~30時間しかないのです。仕事の進め方に対するアイディアを出し合うとここまで違うのかと驚きました。

説教、否定、ダメ出しよりも前向きな表現をする

私が体験した心理的安全性がない職場では、説教が当たり前でした。それゆえ何かミスをしたり、何か問題が起きると、すぐに厳しく説教されました。

そういう文化だからなのか、何でも悪い方に捉え、説教に持って行かれました。

たとえば作った資料に1か所解りにくい表現があったとしましょう。心理的安全性がない職場では、上司にこんな資料のレビューをお願いしたら、表現が解りにくいと説教されました。だからと言ってどういう表現ならいいのか教えてくれず、解りやすくしろと怒鳴られるだけでした。

心理的安全性がある職場では、決して説教されず、むしろ一緒に考えてくれたり、親切に教えてくれたりしました。こういう捉え方をされてしまう可能性があるよねとか、こういう人たちはどう感じるだろう?と聞かれ、一緒に考えてくれたものです。

また見落としていることがあった場合などは、心理的安全性がない職場では、「なんで忘れているんだ!しっかりやれ!」と説教されました。しかし心理的安全性がある職場では、「これ忘れていたら危ないじゃん、気付いてよかった」となり、説教はされませんでした。

否定ありきではなく、一緒に前向きに考える職場の方が心理的安全性があると私は感じます。

私が実践している心理的安全性を高める方法

私がマネジメントする際に、心理的安全性を高めるために実際にやっている方法を解説します。ここでは5つ挙げますが、他にも意識していることがありますのでリンクを貼っておきます。

仕事の目的を話す

私は自分のプロジェクトに配属になった人に、最初に目的を話すようにしています。

顧客はどういう人たちで、どういう課題を抱えていて、うちの会社はそれにこういう形で応えようとしているという話ですね。

私がマネジメントをするとき、私はメンバーを自分の命令に従う人とは考えていません。組織の歯車とも考えていません。同志として一緒に仕事をする人だと考えています。

信じて任せる

私は心理的安全性がない職場でマイクロマネジメントを体験しました。事細かくやり方を指示され、管理者が望むやり方でないと怒鳴られました。ちょっとしたミスで説教されるのも当たり前でした。進捗も1時間単位など細かく管理されました。

こんなやり方ではやりづらくて仕方ないです。しかし管理者から見れば、労働者とは怠惰なものだから、厳しくやらないといけないというのです。だからメンバー側としては、マメに管理者に報告して満足させてやることも仕事のコツだと言われたことがありました。

未だにこのやり方はバカバカしいと考えています。むしろマイクロマネジメントなんてせず、自由にやらせてやればいいじゃんと。大人なんだから、必要な情報と前提知識さえ教えておけば、自分で試行錯誤して何とかやるでしょと。そして実際にその通りになります。

マイクロマネジメントについては別途記事を書いていますので、気になったら読んでみてください。

私の体験上、マイクロマネジメントをしているプロジェクトは残業が多く、終電や休日出勤も珍しくなかったです。

しかし私が心理的安全性があると感じている職場や、私自身が自由にやらせるやり方をしていて、残業が沢山発生したことはありません。むしろ定時帰りも普通なくらいです。

自由にやらせるマネジメントはマネジメントを放棄していると感じるかもしれません。しかし違います。マイクロマネジメントこそマネージャーの勉強不足を表しています。

意見を求める

どんなに経験や知識が豊富な人でも、人間である以上は間違えることがあります。完璧などあり得ません。

心理的安全性がない職場では、上司など目上の人は完璧で正しいという前提に立っています。それがそもそもの間違いです。

私は自分が完璧とは程遠いこと、知らないことが沢山あることを知っています。だからメンバーに「これってどう思う?」と聞くこともありますし、「これ悩んでいるんだけどいいアイディアある?」と聞くこともあります。

一般的に見ると情けないマネージャーでしょう。しかしこれでいいというのが私の考えです。一人の人間が知ることができる知識には限りがあるからこそ、人が協力することに価値があるのです。

エイミー・エドモンドソン教授の本でも、心理的安全性を実現する方法として意見を求めることが挙げられています。

自分の非を認める

人間は完璧ではありません。上司など目上の人が絶対に正しくて間違えることがないなんてありえません。

実際に私はつまらないミスだってしますし、間違えることがよくあります。そんなときは顧客にもメンバーにも謝ります。

私は自分の非を認めない人が嫌いです。逆ギレする人はもっと嫌いです。上司がそんなことを平然としたらどうですか?私はやってられないと感じます。

だから私は自分が間違えたら謝ることを大事にしています。

ありがとうと言う

仕事だからやって当たり前という考えは根強いです。しかし仕事だからという理由ではやらされ仕事にしかならず、モチベーションは出ません。

私は仕事とは本来はマネージャーが全て責任を負うものであり、メンバーはそれを手伝ってくれている人たちと考えています。メンバーがいようがいなかろうが、全ての仕事を終わらせるのは責任者たる自分なのです。

だからこそ自分のために働けとか、仕事だからやれという考えは嫌いです。自分1人ではできない仕事をするためにチームがあるのです。

メンバーの方が組織上の立場は下ですが、お願いしますとありがとうは必須です。もちろん下請けなどの協力会社に対しても、顧客に対しても同様です。

他人の仕事のおかげで自分が助かっているのだから、ありがとうは言いましょう。

仕事で関わる人への接し方については別途記事を書いています。気になったら読んでみてください。

終わりに

今回は心理的安全性について、私の実体験を書きました。

知識への理解を深めるためには、具体例を考えてみることも有効です。そのため私自身が心理的安全性があると感じた職場と、心理的安全性がないと感じた職場について書き出してみました。

その後で自分自身が気を付けていることについて書いてみました。

心理的安全性は働きやすさにもつながりますので、重要な要素です。そして人類が仕事において長くないがしろにしてきたものでもあります。

心理的安全性を実現することで、いい仕事をしていきましょう。

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