実体験に基づく従業員エンゲージメントを向上させる方法

従業員エンゲージメントという言葉をよく聞くようになりました。転職も普通になり、離職率も悩ましい問題になってきました。
また長時間労働して量をこなせばいいわけではなく、生産性を高めて限られた時間で成果を出すことも求められる時代になりました。
そんな中で有効な戦略の1つが従業員エンゲージメントを向上させることです。
従業員エンゲージメントを高めれば、生産性も高まり、離職率も下がります。しかし従業員エンゲージメントを向上させることは難しいです。
私は転職経験が多く、従業員エンゲージメントが高い会社も低い会社も経験してきました。今回はその実体験をもとに従業員エンゲージメントを向上させる方法を考えてみます。
生産性や離職率に悩む、あるいは従業員エンゲージメントを向上させたいと考える経営者や管理職、人事部の方の参考になれば幸いです。
従業員エンゲージメントとは
エンゲージメントとは愛着や絆などつながりの強いつながりを表す言葉です。よって従業員エンゲージメントとは従業員が会社に対して強いつながりを持っていることを指します。
もうちょっと具体的に書くと、従業員エンゲージメントとは会社が目指す方向性を理解し、会社から言われたからではなく、自発的に会社に貢献しようとする意欲の強さです。
従業員エンゲージメントは以下の3つの要素からなります。
- ビジョンなどの会社が目指す方向性に対して従業員が理解し共感できていること
- 従業員の帰属意識
- 従業員が自発的な行動意欲を持っていること
言い換えればこれらを満たすようにしていけば、従業員エンゲージメントは向上するということです。
会社が目指す方向性が解れば、自分は何のために頑張ればいいか、自分が何の役に立つかが解ります。帰属意識が高い方が会社に貢献しようと思います。
自発的な行動意欲が高ければ、指示待ちなど怒らず、自分から必要な作業を探し、提案もするようになります。
従業員エンゲージメントを向上させるメリット
従業員のモチベーションが上がる
従業員ゲージメントを向上させることのメリットは、何と言っても従業員のモチベーションが上がることです。
言うまでもなく、モチベーションが高い方がいい仕事をします。自発的に仕事に取り組みますし、より高い成果をあげよう、自分のスキルを高めようという意識も高くなります。
従業員がこのようにモチベーションが高い状態になれば、当然ながら仕事の成果も上がるので、会社の業績にも結びつきます。
また、モチベーションが高い従業員がいることで、周囲の従業員にいい影響を与えるでしょう。すると組織全体のモチベーションにもプラスになってきます。
従業員の離職率が下がる
近年では従業員の離職は大きな問題となっています。多くの企業では、人事制度を工夫して従業員の離職率を下げようと試みています。
従業員の離職には大きなデメリットがあります。1つは後任の人材を採用すること、もう1つはその人を教育することです。採用にせよ、教育にせよ。時間もお金もかかります。
よって従業員が離職するとその穴埋めがとても大変なのです。
あなたも職場で人が辞めたことで、人手不足になって仕事で大変な思いをしたことがあるかもしれません。
早く次の人を見つけてくれと思っても、すぐには次の人が入ってくれないと思います。なぜなら時間もお金もかかるからです。
そして、次の人が入ったとしても教えるのに時間がかかることは言うまでもないですよね。
従業員エンゲージメントを向上させる方法
ミッション・ビジョン・パーパスを明確にする
従業員エンゲージメントを向上させるためには、従業員に自社が目指す方向性を理解してもらう必要があります。
従業員からしたら、この会社はどこを目指してるんだろうということが解らなければ、自分もどう頑張ればいいのか解りません。
また、何のために働くか、自分の仕事は社会的にどんな意義があるのかということもエンゲージメントの向上には重要です。
仕事なんてお金さえもらえればいいと思うかもしれません。しかしそれでは社畜です。嫌だけど仕方なく仕事をしていて楽しいですか?嫌ですよね。
それよりも自分の仕事が顧客や世の中のこういうことに役に立っていると感じられた方が、やりがいも出て、モチベーションは高まるでしょう。
だからこそ、会社は自社が目指す方向を明確に決め、従業員に伝えていく必要があります。こうすることで、従業員エンゲージメントを向上させることができます。
私自身が転職を繰り返して色々な会社を経験したことや、マネジメントを長年やってきたことも書きます。
言われたことをやれというよりも、顧客や世の中のためにこういうことをしたいと言っている会社やプロジェクトの方が上手く行っています。
実は目指す方向性や目的をしっかり説明することは、心理的安全性の確保につながります。心理的安全性が高まれば従業員エンゲージメントも高まります。
人材投資を行う
従業員エンゲージメントを向上させるには、教育や福利厚生などに投資する必要があります。
従業員からしてみれば、自分はただの頭数であるよりも、重要な戦力であると見られてる方がいいでしょう。
教育や福利厚生に投資することで、従業員からしたら自分が大事にされてることを実感できます。
それによって、従業員はエンゲージメントが高まり、モチベーションも高まり、仕事の成果が高まります。結果として会社の業績も高まっていきます。
この流れを表したサービスプロフィットチェーンというフレームワークがあります。
また、別の面白い考え方で贈与というものがあります。詳細はこちらの本に書かれています。

世界は贈与でできているーー資本主義の「すきま」を埋める倫理学 [ 近内 悠太 ]
返報性の法則とも似ているのですが、人は与えられると与えてくれた人、または他の人に返そうと思います。
会社も同様であり、会社が従業員に投資すれば、従業員はその分だけ結果を出して頑張ろうと思います。
あなたは自分をただこき使うだけの会社と、自分のために研修を充実させてくれる会社、そして希望通りの仕事をやらせてくれる会社、どちらがいいですか?
どちらの方がこの会社のために頑張ろうと思いますか?
答えは明らかだと思います。
私も転職を繰り返して両方の会社を経験していますが、明らかに後者の方が働きやすく、モチベーションも高まります。
上司やチームがサポートしてくれる
実は従業員エンゲージメントにおいて最も重要なことは、上司やチームがサポートしてくれることです。従業員エンゲージメントは経験やスキルは関係ないのです。
困った時に上司やチームメイトが助けてくれる、自分はチームに支えられていると感じられると、従業員エンゲージメントは高まります。
逆に困った時に上司もチームメイトも助けてくれないと孤独感を感じてしまいます。孤独は従業員エンゲージメントを下げます。
これはDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2019年11月号に掲載された話です。有料記事ですが気になる方はこちらの論文を読んでみてください。
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/6199
従業員の声を拾い施策に反映する
重要なことですが、会社が上から従業員に一方的に押し付けていては、従業員エンゲージメントは高まりません。
それでは従業員は上から言われたことを黙ってやれと言われてるようにしか感じません。自分の存在意義って何だろうと思ってしまいます。
実際に私も言われたことを黙ってやれ、口答えするなという会社に入ってしまったことがあります。
それらの会社では意見を言うと説教されました。当然ながらモチベーションは下がりました。そしてやる気がないと益々説教されるという悪循環に陥りました。
だからこそ、従業員の声を拾うことは重要だと言いたいです。今、会社全体で何が問題なのか、現場の従業員は何を感じているのか、こういうことをしっかり把握しましょう。
例えば横のつながりが少ない。会社の場合は、部署を超えた交流の機会を持つのも手です。多くの会社は縦割りですから、こういうことはよくあることでしょう。
社内の人と交流を持つことで、自分とは違った視点を学ぶことができたり、違う技術について学ぶことができたりします。また困った時の相談相手を見つけられる可能性もあります。
交流の手段として飲み会をやるのもいいですが、ライトニングトークのような発表会も有効です。あるいは見学会や勉強会でもいいでしょう。
学びの機会として研修や資格手当を充実してほしい、有給休暇を取りやすくしてほしいなどの意見もあるかもしれません。他にも作業効率が低い業務を何とかしてほしいという声も少なくないかもしれません。
従業員は表向きは黙って会社や上司の言うことを聞いています。それは生活のためであり、不満がないわけではないのです。不満を言ったら怒られるから言わないだけなのです。
私はブラック企業を経験したこともあります。上から言われたことを黙ってやれという会社であり、経営陣や管理職はうちの会社は完璧みたいに思っていました。
しかし現場では愚痴が溢れかえっていました。飲み会に行っても愚痴だらけでした。従業員は言わないだけで不満を沢山抱えています。不健康極まりないことです。
だからこそ意見を集めて、改善できるところは改善していきましょう。
もちろん残業とか業務の非効率のように時間がかかるもののあれば、給料のように現実的には難しいこともありますが、妥協点を探ってできることをしていきましょう。
終わりに
今回は従業員エンゲージメントの効果と向上させる方法について解説しました。
いずれも私が論文や書籍で学んだことや、自分自身が不満を感じていた会社で実体験したこと、自分自身が満足できている。会社で実際に行われていたことなどを元に書いています。
今回の記事が従業員エンゲージメントを向上させるための施策で悩む方の参考になれば幸いです。