クリティカルパスの求め方を日常的なことを例題にして解説!

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クリティカルパスの求め方

今回はクリティカルパスの例題を作って学ぼうというテーマで書きます。例題は作業A~Fみたいなものではなく、日常的なものとします。これによってどんな職業の方でもイメージしてもらいやすくしたいと考えています。

仕事の計画を立てる上で、スケジュールの作成は必要です。そしてスケジュールを立てる上で全体の期間に影響するのがクリティカルパスです。

よってクリティカルパスを意識することで、求められる期日までに完了できるスケジュールを立てるのに役立ちます。

今回の記事は次のような方を対象としています。参考になれば幸いです。

  • クリティカルパスの勉強をしたい方
  • マネジメントの勉強をしている方
  • 生産管理の勉強をしている方
  • 作業期間を短くしたいと考えている方
  • 作業効率を上げる方法で悩んでいる方

クリティカルパスについて

クリティカルパスとは何か?

そしてスケジュールを立てる上で、最短何日で終わるのか?や、どの作業を短縮すれば全体の期間を短縮できるのか、あるいは短縮しても全体の期間を短縮できない作業はなにか?などを知ることも必要です。

どんな作業でも時間がかかる一方で、ほとんどの仕事には期日があるからです。よって期日までに確実に終わるスケジュールを立てる必要があります。

当然ながら理想だけで実現不可能なスケジュールを立ててはいけません。期日に間に合うように10日かかる作業を5日でやるスケジュールにしてはいけません。10日かかるなら10日でスケジュールを立てるか、8日などに減らす方法を考える必要があります。

ここで計画全体の最短完了期間という概念を使うと便利です。最短でも完了までにこれくらいかかるという期間とその作業及び順序をクリティカルパスと呼びます。言葉だと解りづらいので図を掲載します。

クリティカルパスの例
最短でもこれくらいかかるという期間と、その作業及び作業順をクリティカルパスと呼びます。

この図は作業の順序を表した図です。オレンジの矢印の経路がクリティカルパスに該当します。そして全ての作業が完了する最短期間はクリティカルパスの期間と一致します。

クリティカルパスは最も長く時間がかかる経路です。そして最も長く時間がかかる経路の合計工数が完了までに必要な最短期間となります。

ちなみにこの図はPERT図というものです。PERT図の読み方や詳細な解説はこちらの記事を参照してください。

アローダイアグラム(PERT図)とは?書き方・読み方についてわかりやすく解説

クリティカルパスが重要な理由

クリティカルパスは全ての作業を完了させる際に最短でもこれだけかかるという経路です。言い換えるとクリティカルパス上にない作業をどれだけ効率化しても、計画全体の所要期間は短縮できません。

計画全体の所要期間を短縮するためにはクリティカルパス上の作業を短縮しなければいけないのです。

これを解らずにただ闇雲に作業の効率化を図っても、計画全体の最短期間は短くなりません。つまりクリティカルパス以外の作業の効率化は効果が薄いということです。余裕を持つことはできるでしょうが、仕事全体の期間には影響しません。

効率化することで効果が出る作業を割り出すのにクリティカルパスが役立ちます。

クリティカルパスの活用方法

クリティカルパスという概念を知っていれば、より短い期間で同じ成果を出せるスケジュールを立てることが可能になります。

スケジュールを立てることはただ作業ボリュームと作業順に沿って線を引くことではありません。作戦計画を立てることです。

計画全体の期間を短くできるのがクリティカルパスですので、クリティカルパスを知ることで、どこに人やお金や機材などを割り当てたらよいかが解るのです。

仕事の進捗を上げたければクリティカルパスに集中しろということです。

クリティカルパスを上手く使って、効果が出る場所に人やお金や機材などのリソースを配置してください。

クリティカルパスを活用する上での注意点

クリティカルパスを活用する上で注意点があります。それはクリティカルパスを短縮すると、別の作業がクリティカルパスになることもあるということです。

これもちょっと解りづらいでしょうから図で解説します。先ほどの図でクリティカルパスを短縮したものがこの図です。

クリティカルパスが変わる例
クリティカルパスを短縮すると、別の経路がクリティカルパスになることがあります。

先ほどはA→D→F→E→Gの経路がクリティカルパスでした。計画全体の作業期間を短縮するためにはクリティカルパスの短縮が必要ですので、作業Fの期間を7日から4日に短縮しました。

すると今度は緑の矢印の経路がゴールまでに最も長く時間がかかる経路になりました。つまり緑の矢印の経路がクリティカルパスになりました。

よって当初のクリティカルパスばかりに注力せず、クリティカルパスを短縮する度に、どこが次はクリティカルパスになったかを検討してください。

クリティカルパスの例題1:旅行の計画と準備

旅行の計画と準備をするケースの例題

Aさんは来月に三連休があることに気付きました。せっかくだから日頃の疲れを癒しに旅行に行くことにしました。

旅行に行くのは久々なので楽しみなのですが、準備も大変です。旅行は1ヶ月後ですので、モタモタしていたら宿も交通機関のチケットも取れないかもしれません。

Aさんは早めに旅行の準備を進めることにしました。そして早速必要な作業を洗い出し、それぞれの作業にかかる時間と、事前に済ませていないといけない作業を洗い出しました。それが次の表です。

No作業先行作業所要工数
1旅行先を決める5日
2ガイドブックを買う10.3日
3宿を取る10.1日
4チケットを買う10.3日
5持ち物を準備する(着替えなど)10.2日
6観光ルートを決める2、32日
Aさんが洗い出した旅行の準備に必要な作業

Aさんの旅行の準備におけるクリティカルパスを出してみましょう。

解答と解説

Aさんの旅行の準備のクリティカルパスは次のようになります。オレンジの矢印がクリティカルパスです。

旅行の計画と準備をする例題の解答と解説
旅行の計画と準備をする例題でクリティカルパスを算出した図です。

この例題では、旅行先を決める→ガイドブックを買う→観光ルートを決めるがクリティカルパスです。他の作業をどれだけ短縮しても、これらの作業を短縮しなければ全体の期間は変わりません。

この例題の場合、旅行先はじっくり楽しみながら決めればいいでしょうから、短くすればいいとも言えませんね。

また旅行の準備は同時並行でできる作業が思ったより多いですね。

クリティカルパスの例題2:大掃除

大掃除をするケースの例題

Bさんの家では毎月家族全員で大掃除をしています。そして大掃除が終わったら家族全員で食事に行きます。

大掃除でやることは毎月決まっています。だからもっと効率良く進めて、もっと早く終わらせて、食事やお買い物を楽しみたいとBさんは考え始めました。

そこでBさんは大掃除でやっていることを一覧化し、所要時間を洗い出してみました。それが次の表です。

No作業先行作業所要工数
1台所のシンクの掃除20分
2台所のコンロの掃除60分
3全ての部屋の掃除機掛け30分
4洗濯40分
5洗濯物干し420分
6風呂掃除30分
Bさんの家で毎月やっている大掃除の作業

Bさんは仕事のために勉強したマネジメントの知識を使って、クリティカルパスを洗い出してみることにしました。クリティカルパスを洗い出せば、短縮すべき作業が解るからです。

解答と解説

Bさんの家の大掃除のクリティカルパスは次のようになります。オレンジの矢印がクリティカルパスです。

大掃除をする例題の解答と解説
大掃除をする例題でクリティカルパスを算出した図です。

順序がある作業は洗濯と洗濯物干しです。そしてこの作業はクリティカルパスになっています。

また台所のコンロの掃除もクリティカルパスになっています。

クリティカルパスが複数になることは起こり得ます。合計工数が最も多く、かつ同じになる作業順が2つ以上あれば、クリティカルパスが2つ以上あるということになるからです。1位が2つ以上あるということですね。

なので作業順と工数をそのままPERT図に反映して、クリティカルパスが複数になっても、そういうことはあるものだと考えてよいです。

例題のクリティカルパスを短縮したケースを考えてみる

クリティカルパスが解ったので、今月の大掃除でBさんは家族全員で、人海戦術によって洗濯物を干してみました。それによって洗濯物干しの時間が10分減りました。

しかしクリティカルパスが2つありますので、大掃除の合計時間は短くなりませんでした。

大掃除を人海戦術でやって10分短縮した場合のクリティカルパスは次のようになります。オレンジの矢印がクリティカルパスです。

大掃除をする例題でクリティカルパスを短縮した場合
大掃除をする例題でクリティカルパスを短縮した状態の図です。

洗濯と洗濯物干しは所要時間が短縮されて、クリティカルパスでなくなりました。しかしもう1つのクリティカルパスだった台所のコンロの掃除はそのままです。そしてクリティカルパスは台所のコンロの掃除だけに変わりました。

もう1つのクリティカルパスだった台所のコンロの掃除は、人海戦術でやるのも難しそうです。おそらく強力な洗剤を使うか、掃除のプロが使うような方法を調べる必要があります。

Bさんの次の課題は台所のコンロの掃除を効率化することです。これでようやく大掃除の所要時間が減ります。

クリティカルパスの例題3:忘年会の準備

忘年会の準備をするケースの例題

Cさんは今年の忘年会の幹事グループに任命されました。

Cさんの会社は従業員数が300人いる中堅企業です。そのため忘年会も規模が大きくなるので、大きな会場を借りる必要があります。

こういう規模ですので、幹事グループも各部署から人が集められ、10人になりました。

Cさんは早速、昨年度の忘年会の準備に使われた資料を集めて打ち合わせを開きました。そして作業一覧を作りました。それが次の表です。

No作業先行作業所要工数
1会場を選ぶ2日
2出欠を取る10日
3ビンゴカードを買う1日
4景品を決める2日
5景品を買う45日
6司会を決める1日
7会場の下見を予約する15日
8会場を下見する70.5日
9音響機材を確認する80.5日
10レイアウトを決める82日
11当日のスケジュールを決める1日
12挨拶を頼む人を決める1日
13挨拶を依頼する125日
Cさんの会社の忘年会の準備で行う作業

Cさんの会社の忘年会では、いつも取締役の挨拶やビンゴ大会が定番になっています。そのため今年の忘年会もそれを踏襲しています。

会場の下見の予約は、明日すぐというわけにはいかないので、1週間を見ています。景品の購入も通販で買うことを想定して5日を見ています。

手強いのは何と言っても出欠です。今回は例題ですので10日にしていますが、実際には1ヶ月くらい前から全社メールで通知するでしょう。

忘年会の日は決まっているため、確実に間に合うようにしなければいけません。そこでCさんはクリティカルパスを出してみることにしました。

解答と解説

Cさんの会社の忘年会の準備におけるクリティカルパスは次のようになります。オレンジの矢印がクリティカルパスです。

忘年会の準備をする例題の解答と解説
忘年会の準備をする例題でクリティカルパスを算出した図です。

やることがとても多いので、PERT図を作るのも大変かもしれません。

会場の選定→会場の下見→音響の確認やレイアウト決めなどは長く感じますね。しかし今回は出欠を取るのにもっとも時間がかかるため、クリティカルパスは出欠を取ることでした。

とはいってもこれは短縮できません。出欠をあまりにせかし過ぎたら、忘年会に参加してもらえなくなる可能性も出てきそうです。

では何もすることがないのか?と言えば、そうでもないでしょう。出欠を取ることがクリティカルパスで、これが待つしかないのなら、他のことをさっさと終わらせれば待つだけの状態になるのです。とっても気が楽になるでしょう。

クリティカルパスの例題4:DTM(ボカロP)

DTMでオリジナル曲を作ってYouTubeにアップするケースの例題

DさんはDTMが趣味で、ボーカロイドを使っています。いわゆるボカロPと呼ばれる人です。

Dさんは作りたい曲が沢山あるのですが、いかんせんDTMはとても労力がかかる趣味です。会社員をやりながらDTMをやるのは時間的に大変です。

そこでDさんはもっと早く楽曲を完成させる方法を考えるべく、DTMに必要な作業を洗い出してみました。作業順序を工夫したり、短縮できる作業を短縮したりすれば、もっと早く完成させられるかもしれないと考えました。

そしてDさんは仕事で学んだ知識を活かして、クリティカルパスを出してみて、楽曲の作成期間を短縮することを考えました。

Dさんが楽曲を完成させてYouTubeにアップするまでの作業は、次の表のようになります。

No作業先行作業所要工数
1作曲5日
2作詞3日
3アレンジ14日
4ボーカルの打ち込み1、22日
5曲の打ち込み36日
6ミックスダウン4、55日
7MVの素材の用意5日
8MVの作成6、75日
9楽曲の解説文の作成61日
Dさんが楽曲を完成させてYouTubeにアップするまでの作業

解答と解説

Dさんの楽曲作成作業のクリティカルパスは次のようになります。オレンジの矢印がクリティカルパスです。

DTMで楽曲を作ってYouTubeにアップする例題の解答と解説
DTMで楽曲を作ってYouTubeにアップする例題でクリティカルパスを算出した図です。

ちょっと厄介なのは作曲とミックスダウンの次の作業です。例えば作曲の次の作業は、作曲だけできれば着手できるのがアレンジ、作曲と作詞の2つができないと着手できないのがボーカルの打ち込みです。

ミックスダウンの場合は、ミックスダウンだけできれば着手できるのが楽曲の解説文の作成、ミックスダウンとMVの素材の用意ができないと着手できないのがMVの作成です。

このように作曲とミックスダウンはこれだけできれば着手できる次の作業と、これに加えて別の作業ができないと着手できない次の作業があります。

こういう場合のPERT図の書き方は教科書などで見たことがありませんので、ちょっと強引に1aや6aという番号を用意してみました。

クリティカルパスを出してみると、明らかに長い経路があることが解ります。ここを外注したりすればクリティカルパスを短くできるかもしれません。

終わりに

今回は日常的に行うであろうことを題材に、クリティカルパスの例題を作って説いてみました。

クリティカルパスを学ぶことで、作業期間の短縮ができるようになります。これは仕事なら納期を短縮できるという意味です。また早く仕事が終われば残業を減らせる可能性もあります。

クリティカルパスを知っていれば、効率化して効果が出る作業も解ります。クリティカルパスは作業の効率化にも役立つのです。

是非クリティカルパスを活かして、効率の良い仕事につなげてください。

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