ブランド構築に必要な要素と作業|強みや提供価値を明確にし順を追って行こう
前回はブランド及びブランディングについて解説しました。今回はブランドを構築する作業について解説していきます。
ブランドの強みと価値を洗い出す
強みを洗い出す
まずは自社の強みを洗い出しましょう。強みとは言っても、解っている場合もあれば解らないという場合もあるでしょう。
強みの基準として、競合他社との比較や業界標準で考えた際に自社が優れていること、あるいは長年大事にしてきたことなどが該当します。強みが文化となっている場合もあり、その場合には発見が困難だったりします。
一例を挙げますと、自動車メーカーで言うとSUBARUはアイサイトを通して安全性を力強く主張しています。なぜ安全性にこだわるかというと、SUBARUは元々は飛行機メーカーだからです。空でトラブルがあったらまず助かりません。だからこそ飛行機には圧倒的な安全性が求められます。
SUBARUはルーツが飛行機メーカーであるからこそ、安全性に対する意識の高さを自社の強みとして主張しているのです。このようにルーツや長年の積み重ねによって蓄積された意識やノウハウも強みとなりえます。
提供できる価値を洗い出す
強みが解ったら提供できる価値について考えてみましょう。強みを基に洗い出してみて、現在できていることも洗い出してみましょう。
ユニクロであれば価格と品質が提供価値です。SPAや機能性の高い素材を作る技術を次々に開発していることがユニクロの強みであり、それによってコストパフォーマンスと品質を実現しています。消費者にとってはコストパフォーマンスが良くて品質も良いという価値があるのです。
提供価値にはどんなものがあるか解らないという場合、ローランド・ベルガーが提供するRBプロファイラーを参考にするのもよいです。提供価値を19種類に分類しています。
Z世代を科学する:RB Profilerを用いたZ世代のビジュアライゼーション
ブランドのコンセプトを設計する
パーパスを決める
パーパスは最近流行りの言葉ですね。多くの企業が導入しています。ブランドもパーパスを定義してみましょう。
このブランドは世の中のどんな問題・課題を解決してくれるのでしょうか?一言で〇〇すると定義してみましょう。もちろん自社の強みを考慮して決めます。強みでもないことで頑張ろうとしても上手く行きませんので。
提供価値を決める
ブランドが提供できる価値を洗い出せたら、絞り込んで行きましょう。ここはクリエイティビティのように沢山洗い出してから絞り込むのが良いと私は考えています。
ターゲットを決める
強みを活かしてやるべきことや提供価値を考えても、ターゲットとなる顧客を決めなければいけません。作っても売れないではいけませんから。
こういう価値を提供して問題・課題を解決してくれる製品やサービスは、どんな人が必要としているだろうか?ターゲットをよく考えてみましょう。
マーケティングとも重なってしまうと思うのですが、どういう価値観を持った顧客層ならこれから作るブランドが受け入れられるかを調査・検討してみましょう。またその顧客層はどれくらいの規模感で、どのようなライフスタイルかを調査・検討してみましょう。
競合との差別化を考える
強みと提供価値が解っていれば、競合ブランドとの差別化はしやすいと思います。競合ブランドと自社ブランドそれぞれの強みや提供価値、特徴などを分析して比較してみましょう。
あまりに競合ブランドと似すぎているようなら、強みやパーパス、提供価値を考え直してみることも必要だと私は考えています。
コンセプトに沿って事業活動を行う
コンセプトに沿った製品・サービスを開発する
コンセプトが決まったら、コンセプトに沿った製品・サービスを開発しましょう。
こういう製品・サービスが売れそうだからとか、こういうのが流行っているからではなく、うちのブランドはこういうコンセプトだからという基準で製品・サービスの開発を行います。
ブランドのコンセプトに沿わない製品・サービスを作ってしまっては、製品・サービスが増える度に何がしたいのか解らなくなっていきます。かつてユニクロが野菜を売り始めたことがありましたが、アパレルのイメージとの関連性が持てず不振となり、すぐに撤退してしまいました。このブランドらしさというものが重要なのです。
だから必ずブランドのコンセプトに沿って製品・サービスを開発します。
コンセプトに沿ったデザインを作る
デザインもコンセプトに沿ったものにしましょう。そしてコンセプトをしっかりと伝えられ、ブランドの世界観を表せるものにしましょう。そのためにはブランディングデザインという知識が必要になります。
ブランディングデザインについては書籍も出ています。デザインノートという雑誌で特集が組まれていることもあります。
【読書】デザインノート Premium 西澤明洋の成功するブランディングデザイン読了
デザインノートPremium『西澤明洋の成功するブランディングデザイン』
デザインの対象は製品・サービスそのものだけではありません。パッケージも対象ですし、店舗の内装・外装も対象です。広告やCMもです。店頭で売るなら袋すら対象になります。制服があるなら制服も対象になります。
ブランドの製品・サービス自体は当然として、ブランドを売る場所や見せる場所でもブランドに関するあらゆる物・事をデザインします。こうしてブランドの世界観を表現することで、顧客にブランドのイメージを伝えます。
さらには接客サービスそのものもデザインが必要です。高級ホテルや高級レストランを想像してください。接客サービスがとても良いことが想像できますよね?
高級なお店でなくても、スターバックスではマニュアルなしで従業員各自が顧客にとっていいと思うことを考えて実践するようになっています。ブランドをデザインするときはこんなところまでデザインします。
コンセプトを従業員に浸透させる
ブランドのコンセプトは従業員に浸透させなければいけません。経営者だけが解っていてもいけませんし、ブランディング担当者だけが解っていてもいけません。製品・サービスの開発者だけが解っていても、営業だけが解っていても不十分です。ブランドを扱う全従業員に浸透させなければいけません。
なぜブランドを扱う全従業員に浸透させなければいけないかというと、ブランドのイメージはブランドと顧客の接点で作られるからです。
ということは店舗で販売するブランドなら、店舗で接客を行う従業員の立ち振る舞いや服装、接客サービス、店舗のデザイン、店頭での配置などによって顧客の頭の中にブランドのイメージが作られます。
普及価格帯ブランドの店舗なら庶民的で入りやすい、高級ブランドの店舗なら高級感と広がりがあって入りづらいなどを感じると思います。この辺りは色々なブランドのお店に行ってみると体感できます。
BtoBの製品・サービスであれば営業担当者はもちろんですが、顧客と仕様調整などを行う技術者、アフターサポートの技術者の知識・技術や対応力もブランドイメージに関わります。
もう一度言いますが、ブランドのイメージは顧客との接点で作られます。だから製品・サービスの企画・開発を行う人がブランドのコンセプトに沿った企画・開発を行うのはもちろん、顧客と接する人もブランドを理解している必要があるのです。
終わりに
今回はブランド作る上で考えることを一通り解説しました。強みや提供価値はまだイメージしやすいと思いますが、デザインする物・事の対象や顧客接点の話は知る人ぞ知ることかもしれません。
色々なブランドのお店に行ったり、色々なブランドのホームページでストーリーやコンセプトを見てみると参考になることがあります。是非好きなブランドでやってみてください。